アライナー治療における上顎後方歯の遠心化:BenesliderとDistaliserの比較と症例報告

アライナー単独治療の限界と新しいアプローチ

アライナーのみを用いた上顎臼歯の遠心移動は、約2mmに制限され、歯の傾斜やアンカレッジの喪失、前歯の唇側傾斜といった副作用が生じやすい。また、患者の協力度、特に顎間ゴムの使用が治療成功に大きく影響する。

BenesliderとDistaliserの統合

精密で効率的な歯体移動による遠心移動を最適化するため、Benesliderをアライナー治療に統合する革新的なアプローチが注目されている。治療法には、まずBenesliderで遠心移動を行い、その後アライナーで咬合を仕上げる二段階治療と、臼歯の遠心移動とアライナー治療を同時に行う一段階治療がある。

骨格性アンカレッジの導入

近年、矯正治療における骨格性アンカレッジの導入は、患者の協力への依存を大幅に減らし、より一貫性のある信頼性の高い結果をもたらしている。ミニインプラントは低侵襲で費用も比較的安価であり、上顎臼歯遠心移動の骨格性アンカレッジとしては、皮質骨が密で軟組織の厚さが最小限である口蓋前部の「Tゾーン」が好ましい挿入部位とされている。

Distaliserの特徴

Benesliderと同様に効果的な遠心移動装置として知られるDistaliserは、スクリュー機構を利用する。この機構により、治療全体を通して歯の正確で制御された予測可能な移動が保証される。週単位で患者自身が活性化することで、時間単位の活性化距離が明確になり、一段階治療におけるアライナーのステージングとの同期が容易になる。ただし、Benesliderに比べてかさばる点が考慮されるべきである。

症例報告:重度のAngle Class II不正咬合の成人女性

35歳の女性患者は、過蓋咬合、7mmの過蓋被蓋、両側性Angle Class II関係(右側3/4単位、左側1/2単位の遠心咬合)を呈していた。以前、骨格性Class II関係のため外科的矯正治療が推奨されたが、患者はこれを拒否した。

治療計画と実行

患者の主訴は上顎前歯の叢生と大きな矢状不一致であり、抜歯を避け、目立たない治療を希望した。

  1. デジタルプランニング: 口腔内スキャン後、ミニインプラント(BENEfit)と両側Distaliserの位置をデジタルで計画。
  2. 装置の製造と設置: Distaliser(TADMAN)は選択的レーザー溶融プロセスで製造され、挿入ガイド(TADMAN)によりミニインプラントの正確な配置とDistaliserの即時装着が一度の来院で可能になった。
  3. 一段階治療アプローチ: アライナー(Invisalign)はDistaliser設置直後にスキャンして製造。目標は、両側性臼歯遠心移動とアライナーによる全歯の歯列矯正を同時に行うこと。
  4. 遠心移動の同期: 週0.2mmの遠心移動率を設定し、スクリューの1/4回転(0.8mmのねじピッチ)に相当させた。上顎右側臼歯が左側よりも遠心に移動していたため、遠心移動は非対称的に計画された。
  5. 半逐次的な後方歯の遠心移動: 小臼歯と犬歯の半逐次的な遠心移動も計画された。臼歯の遠心移動完了後も、小臼歯が完全に遠心移動するまでDistaliserはアンカレッジとして維持された。Distaliserに接続された第一大臼歯(#16, #26)は歯体移動のみが可能であり、傾斜や回転運動は避けるようClinCheckプランニングで注意された。

過蓋咬合の修正と治療結果

過蓋咬合の修正のため、切歯はまず順傾斜され、その後、後退時の過度の口蓋側傾斜を防ぐために歯体移動で圧下された。さらに、Class IIエラスティックと前方バイトランプが使用された。下顎の叢生は歯間エナメル質削減で対処された。

アライナー治療は62枚の第一シーケンスと10枚のリファインメントアライナーで構成された。19ヶ月の治療期間で、後方歯の非対称的な遠心移動、上顎・下顎の叢生の解消、矢状不一致の改善、正中線偏位の修正が達成された。

まとめと考察

本症例は、骨格性アンカレッジ型Distaliser、前方バイトランプ、Class IIエラスティックを用いることで、成人における重度のClass II不正咬合と過蓋咬合が成功裏に治療できることを示している。この方法は、アライナーのステージングと歯体移動の精密で信頼性の高い同期を可能にし、成人患者にとって審美的かつ効果的な治療選択肢となる。また、Distaliserの設計によっては、遠心移動中に臼歯を挺出させることで、咬合の垂直的次元を増加させることも可能である。

元記事:Combination of a distaliser and aligners for Class II correction