MCT8欠損症初の治療薬「Emcitate」が米国で承認
スウェーデンのEgetis Therapeuticsが、超希少遺伝性疾患MCT8欠損症(Allan-Herndon-Dudley症候群)に対する初の治療薬として「Emcitate(tiratricol)」の米国での承認を獲得しました。
MCT8欠損症とは
MCT8欠損症はX連鎖遺伝性疾患であり、甲状腺ホルモンを中枢神経系に運ぶMCT8輸送システムが機能不全に陥ります。これにより、脳内の甲状腺ホルモンレベルが低下し、脳代謝の遅延や神経機能の障害を引き起こす一方で、体内の他の部分ではホルモンが過剰になります。FDAはこれを「壊滅的な疾患」と表現しています。
主な症状:
- 独立した歩行や着座の困難
- 発話の欠如または重度の制限
- 知的障害
- 摂食困難
- 心臓および代謝への慢性的なストレス
患者の平均余命は約35歳とされています。疫学的推定では、男性の7万人に1人が罹患しており、米国とヨーロッパで合計5,000人から10,000人に影響を与えるとされます。
Emcitateの作用と効果
Emcitateは甲状腺ホルモン受容体アゴニストであり、FDAによってMCT8欠損症の成人および小児患者における末梢性甲状腺中毒症の治療薬として承認されました。FDAの担当者によると、Emcitateは「壊れた輸送体に頼ることなく細胞に入ることができ、上昇した血液中の甲状腺ホルモンレベルを低下させる」と説明されています。
臨床試験では、1日1回経口投与されるこの薬が、血液中の甲状腺ホルモン過剰レベルを低下させ、収縮期血圧上昇や心拍数などの他の末梢症状を改善することが示されました。
承認の意義と今後の展開
EgetisのCEOは、今回の承認がMCT8欠損症の患者とその介護者にとって「転換点」となると述べました。Emcitateは2025年12月にEUでも承認されており、今年5月のドイツでの発売後、第2四半期には約170万ドルの売上を記録しています。
FDAの承認に伴い、Egetisは希少小児疾患優先審査バウチャー(PRV)を獲得しました。これは新薬の審査期間を短縮するために使用でき、他社に売却された場合、1億ドルから2億ドルの価値があるとされています。
米国での価格は未公開ですが、ドイツでは割引前で1ヶ月分あたり約10,000ユーロが参考価格とされています。
その他の開発
MCT8欠損症向けには、PriZm Therapeuticsが血液脳関門を通過し中枢神経系への影響に対処する可能性のある合成甲状腺ホルモンアナログ「SRW101」を開発中です。
Egetisはまた、Emcitateを次の適応症として、約4万人に1人が罹患する甲状腺ホルモン抵抗性ベータ(RTH beta)の開発を開始しています。