生物学的性別と口腔疾患における発生率・症状の違いに関する研究

生物学的性別と口腔疾患の関連性:大規模な電子カルテ調査

研究背景と目的

免疫反応や炎症反応における生物学的性別の違いが、感染症や炎症性疾患の感受性や発現に影響を与える可能性が指摘されています。しかし、歯、口腔、頭蓋顔面疾患の発生における性差に関する大規模なエビデンスは限られていました。本研究は、この分野のギャップを埋めるため、大規模な遡及的調査を実施しました。

研究方法

この調査では、以下の2つの主要な米国リポジトリの電子健康記録データが分析されました。

  • US National Institutes of Health All of Us研究プログラムからの成人254,700人分のデータ
  • BigMouth Dental Data Repositoryからの約470万件の記録
  • 研究者らは、200以上の歯科、口腔、頭蓋顔面疾患および病態の発生率を男性と女性で比較しました。

主要な研究結果

All of Usデータセットからの知見

  • 性別層別化された条件の3分の2以上で有意な性差が確認されました。
  • そのうち半分強が女性に偏り、半分弱が男性に偏っていました。
  • 女性に特に強い関連が見られた疾患:
  • 再発性アフタ性口内炎、口腔アフタ性潰瘍、口腔乾燥症
  • 複数の歯の発育および萌出障害
  • 歯膿瘍、可逆性歯髄炎、歯痛、一部の歯周炎
  • 男性に最も強い偏りが見られた疾患:
  • 全身性および局所性の中等度歯周炎
  • 局所性歯周疾患による歯の喪失
  • 象牙質または歯髄に及ぶ小窩裂溝う蝕
  • 口腔悪性腫瘍

BigMouthデータセットからの知見

  • 性別層別化された条件の約5分の2で有意な性差が確認されました。
  • そのほとんどが女性に偏っていました。
  • 女性に顕著な関連が見られた疾患:
  • エナメル質、象牙質、セメント質欠損
  • 口腔乾燥症
  • 症候性根尖性歯周炎、症候性可逆性歯髄炎、顎関節症
  • 男性に偏りが見られた疾患:
  • 口腔悪性腫瘍
  • 全身性重度侵襲性歯周炎
  • 根面う蝕

データベース間の一貫性の欠如

  • 両データベースに共通する20の診断用語のうち、8つで性差の方向が逆の結果となりました。
  • 特に、全身性中等度および局所性慢性歯周炎、歯の摩耗およびアブフラクションで顕著でした。

考えられる要因と今後の展望

著者らは、観察された性差の一部には、免疫反応、ホルモン、性特異的遺伝因子などの生物学的メカニズムが寄与している可能性を示唆しています。しかし、行動的、環境的、その他の集団レベルの要因も役割を果たす可能性があると指摘しています。

本研究は、口腔健康研究において性別関連パターンをより深く考慮することの重要性を示しています。これらの知見は、最終的により個別化された予防、診断、治療アプローチを支援する可能性がありますが、臨床的推奨を行う前に、追加の集団での研究が必要であると強調されています。

この研究は「Examining electronic health records to investigate sex differences in oral diseases and conditions」と題され、2026年10月号のClinical and Experimental Dental Research誌に掲載されました。

元記事:Sex differences in oral and dental conditions identified in large US datasets