歯科医のキャリアにおける課題と「ワークライフハーモニー」
歯科医であり、現在はコーチ・講演者として活動するクリスティーナ・ラディクス博士が、自身の経験に基づき、歯科教育の課題、メンタルヘルス、キャリアの持続可能性について語った。
歯科教育のギャップと開業医としての責任
歯科教育は患者ケアの準備に重点を置く一方で、リーダーシップ、ビジネス、個人的スキルへの注意は不十分であると指摘。ラディクス博士は、スウェーデンとスペインでの勤務経験から、行政システムの違い(特に保険関連の書類作成)が業務に大きな影響を与えると述べた。
開業医になると、スタッフや財務、クリニックの将来に対する責任が飛躍的に増大し、「優れた歯科医であることと、成功する歯科ビジネスを経営することは、二つの異なる仕事である」と痛感したという。
メンタルヘルスのスティグマと燃え尽き症候群
歯科医療の世界では、ストレス、不安、燃え尽き症候群が「完璧主義」の仮面の下に隠されがちである。医療従事者は「強い存在」であるべきというプレッシャーや、プロフェッショナルな判断を恐れる気持ちから、問題をオープンに話しにくい環境がある。ラディクス博士自身も、キャリアの中で二度燃え尽き症候群を経験したことが、フルタイムの臨床から離れ、コーチングの道に進むきっかけとなった。
「ワークライフバランス」から「ワークライフハーモニー」へ
ラディクス博士は「ワークライフバランス」ではなく「ワークライフハーモニー」という言葉を提唱する。「バランス」が静的な状態を示すのに対し、「ハーモニー」は、変化する優先順位を認識し、時間とエネルギーをどこに投資するかを意識的に選択することを意味する。
彼女は、これを実践するための「3 + 5の公式」を紹介している。
3つのステップ:
- 受容: 何が起こっているかを認める。
- 確認: 何がコントロール可能か、その状況が自分に何を犠牲にさせているか、そこから何を学べるかを確認する。
- 選択: エネルギーをどこに注ぎ、何を手放すかを選ぶ。
- セルフケア: 睡眠、休息、運動、栄養。
- 自己認識: 自身のパターンと限界を認識する。
- 人間関係: 患者やチーム以外の人々とのつながりを保つ。
- 自由時間: 歯科以外の自分であるための時間。
- キャリアと目的: 成功が自分にとって何を意味するかを問う。
5つの柱:
歯科教育と専門文化への提言
ラディクス博士は、歯科教育においてコミュニケーション、自己認識、葛藤処理、リーダーシップといった「人間的側面」のスキルを継続的に教えるべきだと主張。また、職場では業務量とウェルビーイングに関する対話を日常的に行う文化を推奨している。
新卒の歯科医に対しては、「信頼できるメンターやコーチを見つけること」そして「自分自身をよく知り、何にワクワクするのか探求し続けること」をアドバイスしている。