薬剤耐性結腸がんを標的とする「スーパーチャージ」された免疫細胞の発見
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の科学者たちは、既存の治療法に耐性を持つ低増殖性の結腸がん細胞を殺傷するよう、希少な免疫細胞を改変することに成功しました。 この画期的な研究は、将来の新たな治療法につながる可能性があります。
結腸がん治療の課題
結腸がんは世界で最も致死性の高いがんの一つで、毎年90万人以上が命を落としています。化学療法は有効なものの、主に急速に増殖するがん細胞に作用します。しかし、多くの結腸がん細胞はゆっくりと増殖するため、治療を回避し、しばしばより悪性化して再発することが課題となっています。
γδT細胞への着目
研究チームは、がん細胞を殺傷する代替手段として、遺伝子改変された免疫細胞の利用に注目しました。特に、「γδT細胞」(ガンマ-デルタT細胞)と呼ばれる、より希少な免疫細胞型を研究対象としました。以前のUCLの研究では、γδT細胞が骨がん細胞を殺傷するように改変できることが示されていましたが、骨以外の腫瘍にも同様の結果が得られるかは不明でした。
γδT細胞の改変方法
研究者たちは、健康な7人から採取したγδT細胞に、レンティウイルスを用いてstIL-15という特殊なタンパク質を産生する遺伝子を挿入しました。これにより、γδT細胞は長く生存し、より速く増殖する能力を獲得します。さらに、これらの改変γδT細胞の一部にはB7-H3抗体が与えられ、これによって細胞は「スーパーチャージ」され、B7-H3タンパク質を発現する結腸がん細胞を認識し、結合する能力が強化されました。
実験結果
研究チームは、これら改変された細胞を、10人の結腸がん患者から採取したオルガノイド(ミニ腫瘍)と組み合わせ、1,000以上の異なる実験条件下でγδT細胞と結腸がん細胞の相互作用を分析しました。
驚くべき結果として、以下の点が明らかになりました。
通常のγδT細胞ががん細胞に曝露されると死滅するか弱体化するのに対し、改変されたγδT細胞は長期間生存できました。
改変γδT細胞が単一の攻撃方法(抗体非依存性細胞傷害性: AIC)のみを使用した場合、がん細胞は「リワイヤリング」によって免疫細胞を無力化する防御機構を発動しました。
- しかし、B7-H3抗体で「スーパーチャージ」されたγδT細胞が二重の攻撃方法(AICと抗体依存性細胞傷害性: ADCC)を使用すると、改変細胞はリワイヤリングを回復させ、化学療法に反応しない低増殖性がん細胞さえも殺傷することに成功しました。 これらの細胞はさらに長く生存し、増殖しました。
研究の意義と将来展望
Corresponding authorであるUCL Cancer InstituteのChris Tape教授は、「この発見は、現在の臨床療法に耐性を持つ結腸がん細胞を、スーパーチャージされた遺伝子改変免疫細胞が殺傷できることを示しています。また、T細胞に複数の攻撃経路を与えることで、がんが免疫応答を弱めるのを防ぐことができます」と述べました。
UCL Great Ormond Street Institute of Child HealthのDr. Jonathan Fisherは、「これらの結果は、がんとの闘いにおける遺伝子改変γδT細胞の強力さを強調しています。これらの知見を基に、固形がんに対する新たな免疫療法を開発することに非常に期待しています」と付け加えました。
γδT細胞は、一般的なαβT細胞とは異なり、MHC受容体による抗原認識ではなく、細胞の「ストレス」や異常を直接感知して作用します。重要なことに、αβT細胞療法と異なり、γδT細胞は患者本人からではなく、健康なドナーから供給できるという利点があります。
研究者たちは、これらの改変免疫細胞の開発を継続し、最終的には臨床試験での検証を目指しています。成功すれば、これは結腸がん、そして他の固形がんに対する新しいタイプの治療法となる可能性があります。
元記事:Supercharging immune cells to fight drug resistant bowel cancer
