Align Technology対HMRCの判決:クリアアライナーはVAT免除対象外に
2026年7月7日、英国上級審判所はHMRC対Align Technologyの訴訟でHMRCの勝訴を決定しました。これにより、クリアアライナーはVAT免除ではなく、標準税率が適用されることになります。
判決の争点と上級審判所の判断
本件の核心は「歯科補綴物(dental prosthesis)」の定義でした。Align TechnologyはInvisalignの供給をVAT法に基づく「歯科補綴物」として免除扱いしていましたが、上級審判所はこの定義について辞書、EUガイダンス、過去の判例などを検討し、補綴物は「失われたり破損したものを置き換え、その身体部位の機能を果たすもの」と明確に結論付けました。
HMRCの主張(裁判所が認めたもの)は、アライナーは何も置き換えるものではなく、既存の歯をより良い位置に「動かす」ものであるため、免除の対象外であるというものでした。Align Technologyは、アライナーが不正咬合を治療し、噛み合わせ機能を回復するための特注医療機器であり、予防的健康目的にも資すると主張しましたが、この主張は認められませんでした。
臨床サービスと製品のVAT扱いの違い
この判決は、歯科医や矯正医が提供する臨床治療(患者の評価、治療計画、装置の装着・調整など)のVAT免除には影響しません。変更されたのは、技工所がアライナー、リテーナー、スプリントなどの「製品」を供給する際のVAT処理です。これらの製品は、失われたり損傷した歯の構造を「置き換える」ものでない限り、補綴物としての免除対象外となります。
広範な影響:アライナーにとどまらない
この判決はInvisalignに限定されるものではなく、「補綴物」の法的定義に関するものです。この定義に基づくと、リテーナー、咬合スプリント、歯ぎしり防止用マウスガード、矯正用拡大装置、機能矯正装置、スポーツ用マウスガードなど、多くの歯科製品がVAT免除の対象外となる可能性が高まります。これらは「置き換える」のではなく、「動かす、保持する、保護する」機能を持つと見なされるためです。
過去の兆候と今後の対応
英国矯正歯科学会(BOS)は、VAT免除の撤廃が治療費増につながり、特にNHSの矯正サービスに影響を与える可能性を懸念していました。また、EU VAT委員会は2015年に同様の見解を示しており、HMRCも2024年2月にVAT通知を更新し、矯正装置の免除リストからの削除を示唆していました。これらの兆候から、今回の判決は突然のものではありませんでした。
技工所は、VATが自己申告制であるため、HMRCからの通知を待つのではなく、自身の製品リストを「失われたり損傷した歯の構造を置き換えるもの」と「既存の歯を動かす、保持する、保護するもの」に分け、後者については税務アドバイザーと相談する必要があります。また、課税対象売上高が年間£90,000を超える場合、VAT登録義務が発生する可能性があるため、小規模な技工所も自身の売上高を確認することが重要です。