思考によるタイピング:麻痺患者のための画期的な脳インプラント技術
新しい脳インプラント技術により、麻痺のある2人の患者が思考を使って仮想QWERTYキーボードでタイピングし、コミュニケーションをとることに成功しました。この研究は「Nature Neuroscience」誌で発表され、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者1名と脊髄損傷患者1名が参加しました。特に、脊髄損傷の参加者は、健常者のスマートフォンタイピング速度に匹敵する速度を達成し、科学的に大きな進歩とされています。
技術の仕組み
マサチューセッツ総合病院ブリガム神経科学研究所とブラウン大学の研究者は、埋め込み型皮質内脳コンピューターインターフェース(iBCI)と人工知能(AI)を用いて、神経活動をキーストロークの動きに変換しました。
- 参加者の脳の運動皮質(自発的な運動を制御する前頭葉の一部)に微小電極を埋め込みました。
- 参加者は、10本の指それぞれについて「上、下、手のひらに丸める」という3つの異なる指の動きを思考で行うよう求められました。
- これにより、研究者はQWERTYキーボードのタイピングに必要な30種類の指の動きに関連する独自の神経活動を識別し、デコードしてテキストに変換しました。
- AIプログラムは、参加者の神経活動に基づき、意図する文字や単語を予測するのに役立ちました。
この研究は、手足の麻痺を持つ人々が思考でコンピューターやロボット義肢を制御するのを助けるために、脳コンピューターインターフェース(BCI)技術の利用を探求しているBrainGate臨床試験の一環として行われました。
既存技術との比較と成果
従来の支援・代替コミュニケーション技術、例えばスティーブン・ホーキングが使用したような視線追跡技術は、1分あたり2〜15語と非常に遅く、長時間目を動かし続けるため疲労が大きく、目の動きに麻痺がある人には利用できないという課題がありました。
今回の研究では、
- 脊髄損傷の参加者は、1分あたり最大110文字、22語という速度でタイピングし、95%の精度を達成しました。これは彼が負傷する前のタイピング速度よりも速いものです。
- ALSの参加者は、1分あたり最大47文字、81%の精度でタイピングできました。
- 脊髄損傷の参加者のタイピング速度は、一般的なスマートフォンのテキストメッセージ速度(約27語/分)に近づくものであり、以前のBCI研究と比較してコミュニケーション率が向上しました。
QWERTYキーボードの採用と学習効果
研究者たちは、馴染み深く、AIとの連携でエラー修正能力が高いという理由からQWERTYキーボードを採用しました。参加者はインターフェースを使用してタッチタイピングを習得し、タイピング速度が向上する学習効果も見られました。
今後の展望
研究者たちは、この技術が個々のニューロンレベルでどのように機能するか、そしてより複雑な動きをデコードして麻痺のある人々の機能回復を助けるシステムの設計について、さらなる研究を進めることに意欲を示しています。将来的には、心臓医がペースメーカーを処方するように、医師が在宅でのコミュニケーションのためにBCIデバイスを麻痺患者に処方できるようになることを期待しています。
元記事:Interface Lets Paralyzed Patient 'Type' Faster than Ever