プライベートエクイティ(PE)による眼科診療所の買収とその影響
PE買収の現状と医師への影響
ベテランズ・アフェアーズ(VA)医療センターの眼科部長であるアンキット・シャー医師は、若手医師がプライベートエクイティ(PE)企業によって買収された診療所に入職せざるを得ない状況に直面していると指摘しています。PEが眼科診療所を買収し始めたことで、独立開業の機会が減少し、多くの若手医師はPE所有のグループへの参加を避ける傾向にあります。ウェイクフォレスト大学のデビッド・ブラウニング医師が共同執筆した2025年の研究では、眼科研修医の約80%がPE所有の診療所では働きたくないと報告されています。
PEは短期間での投資回収を目指しており、近年、PEが買収した診療所グループを上場企業が買収する動きも出てきています。アメリカ医師会(AMA)の分析によると、2024年には全医師の6.5%がPE所有の診療所で働いており、2020年の4.5%から増加しています。特に眼科ではこの割合が高く、KFF Health Newsの2022年報告では8%の眼科医がPE所有の診療所で勤務。網膜専門分野ではさらに高く、2025年のHealth Affairs研究では約30%の網膜専門医がPE運営の診療所に所属しています。
患者ケアへの影響とPEの戦略
PEによる買収は、医療費の増加や提供されるサービス内容の変化をもたらすことが複数の研究で示されています。ブラウン大学のヤシャスウィニ・シン博士の研究では、PE所有の診療所は1請求あたりの料金が平均71ドル増加し、網膜剥離修復などの利益率の低い重要な処置の数が約20%減少したことが報告されています。網膜剥離は診断から数日以内に治療しないと永続的な失明につながるため、タイムリーなケアが極めて重要です。また、メディケアの支払いポリシーが、特定の網膜疾患治療において高価な薬剤の使用を促進するインセンティブとなっていることも指摘されています。
PEは、高齢化による白内障手術や網膜注射の需要増、そして地域に多数存在する独立した診療所という眼科の伝統的なモデルに魅力を感じています。PEの主要な戦略は、まず「プラットフォーム」となる大規模な診療所を買収し、その後周辺の小規模な診療所を「アドオン」として統合していく「プラットフォーム・アンド・アドオン統合」です。
PEから上場企業への移行と今後の展望
2025年には、PEが統合した診療所グループを上場企業が買収する動きが活発化しました。例えば、CencoraがRetina Consultants of Americaを44億ドルで、McKesson CorporationがPRISM Vision Holdingsを8億5000万ドルで買収しています。これらの企業は、臨床的自律性を維持し、臨床的意思決定には関与しないと主張していますが、PEによる買収が医師の離職率を年間20%にまで高めたという研究もあり、この所有権の移行が医師の自律性や患者ケアにどのような影響を与えるかは、まだ不透明です。
PEの潜在的な利点
一方で、PEとの提携にメリットを見出す医師もいます。ジャイ・パレク医師は、PE支援のReFocus Eye Healthと提携したことで、人事などのビジネス面を親会社が担うことで、医師は患者ケアに集中でき、より良い福利厚生を提供できるようになったと述べています。パレク医師は、提携後も医師と患者の関係を維持し、自身の診療所の文化も変わっていないと感じています。PEとの提携は「良い話もあれば、そうでない話もある」と彼は述べ、医師の自律性と患者ケアは、医師自身が提携をどのように構築するかにかかっていると示唆しています。
元記事:As Private Equity Sells Out, Will Eye Practices Fare Better?