MSD、革新的医薬品への評価不足を理由に英国での10億ポンド規模の事業拡大を中止

MSD、英国での10億ポンド規模の拡張計画を中止

MSD(米国ではMerck & Co)は、英国における10億ポンド(13.5億ドル)規模の事業拡張計画を中止することを発表しました。これには、ロンドンのキングスクロスで建設中だった研究開発(R&D)施設の建設中止も含まれます。同社は、英国が革新的な医薬品を評価していないことが中止の理由であると説明しています。

影響と背景

この決定により、キングスクロスのR&D施設での作業は中断され、125人の科学者および管理スタッフが解雇されます。また、MSDは年内にロンドンバイオサイエンスイノベーションセンターとフランシス・クリック研究所のR&D施設からも撤退する予定です。

この動きは、英国がライフサイエンス分野における主要な拠点としての地位を確立しようとする努力に大きな打撃を与えるものです。数ヶ月前にはAstraZenecaも英国での4億5000万ポンドのワクチン製造工場への投資を中止しており、今回のMSDの決定は、製薬業界と政府間でNHS医薬品価格に関する交渉が決裂した直後に発表されました。

投資先と中止の理由

MSDは、投資計画を米国にシフトするとしています。米国では、トランプ政権による医薬品輸入への高関税の脅威により、製薬会社は国内に新施設を設置するよう圧力を受けています。

同社は、今回の決定が「歴代英国政府によるライフサイエンス産業への投資不足と、革新的な医薬品やワクチンの全体的な過小評価」に対処できなかった結果であると述べています。

業界の懸念と具体的な問題点

英国製薬産業協会(ABPI)は、英国が製薬業界の投資先としての魅力を失っていると警告しています。MSDは2017年に10億ポンドの投資計画を発表し、2023年にキングスクロスで着工しましたが、その時点ですでに英国が大規模投資プロジェクトで他国に遅れを取るリスクについて警告していました。

ロンドン拠点は、生物医学研究者との近接性から理想的と見なされていましたが、臨床試験の実施の難しさや、製薬企業が医薬品に課す価格を非常に低く抑えるクローバック税(リベート制度)が、英国を魅力のないものにしていました。臨床研究環境の改善努力はあったものの、クローバック率は業界と政府間の大きな対立点であり、解決に向けた交渉は先月決裂しています。

ABPIの最高経営責任者であるリチャード・トーベット氏は、MSDの決定を「信じられないほどの打撃」であり、「イノベーションから生まれる製品への体系的な投資不足」の結果であると述べています。

元記事:Fresh blow to UK life sciences as MSD abandons £1bn project