武田、中国のイノベント・バイオロジクスとがん治療薬2件で提携、最大114億ドル規模に

武田、中国のイノベント・バイオロジクスとがん治療薬2件で提携、最大114億ドル規模に

AI Technology この記事のポイント
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    武田が中国Innoventと最大114億ドルの大型提携を結び、がん領域のポートフォリオを強化。
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    提携の中心は、PD-1/IL-2α二重特異性抗体IBI363とClaudin 18.2 ADC IBI343の2つの後期段階がん治療薬。
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    本提携は、中国が新薬開発の主要拠点として台頭し、大手製薬企業がライセンスに高額を投じる傾向を裏付けるもの。

武田、中国Innoventとがん治療薬で大型提携:最大114億ドル規模

武田薬品工業は、中国のInnovent Biologicsと、2種類の後期段階がん治療薬に関する提携を発表しました。この契約には、前払い金として12億ドルが含まれ、総額は最大114億ドルに達する可能性があります。

提携の対象となる主要候補薬

IBI363: PD-1とIL-2αを標的とする「ファーストインクラス候補」の二重特異性抗体。

IBI343: Claudin 18.2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)。

武田はさらに、EGFRとB7H3を標的とする二重特異性ADC「IBI3001」に対するオプション権も獲得しました。

提携の背景と意義

この提携は、中国が特にがん領域における新薬の主要な供給源として台頭し、既存の大手製薬会社が高額なライセンス料を支払う意欲があることを示すものです。EYのデータによると、昨年は中国との提携が40件(総額315億ドル)、2025年第1四半期だけでも13件で180億ドルに達しています。

武田にとっては、2年前に肺がん治療薬Exkivity(モボセルチニブ)を市場から撤退させた後のオンコロジーポートフォリオの穴を埋めるものとなります。

各候補薬の詳細

IBI363:免疫腫瘍学の基幹療法候補

作用機序: PD-1/PD-L1経路を阻害して免疫システムへのブレーキを解除しつつ、他のIL-2薬で見られる毒性を回避しながらIL-2経路を活性化します。これにより、免疫的に「冷たい」腫瘍の免疫療法を可能にすることが期待されています。

開発状況: 中国では扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の二次治療薬としてフェーズ3試験の準備が進められており、中国と米国で画期的新薬指定(Breakthrough Designation)を受けています。

共同開発・商業化: 武田とInnoventは全ての市場でIBI363を共同開発し、米国では武田が費用と利益・損失の60%を負担します。武田は大中華圏と米国を除く地域での独占的な商業権を取得します。国際的には、NSCLCと結腸直腸がんを主要適応症とし、一次治療としての使用も視野に入れています。

IBI343:ベストインクラスを目指すClaudin 18.2 ADC

市場動向: Claudin 18.2を標的とする抗体療法としては、アステラス製薬の胃がん・食道胃接合部がん治療薬Vyloy(ゾルベツキシマブ)が既に市場に投入されています。

特徴: 武田とInnoventは、IBI343がClaudin 18.2カテゴリーにおいて「ベストインクラス」のプロファイル、特に「良好な」安全性プロファイルを提供できると考えています。

開発状況: 中国と日本で胃がん・食道胃接合部がんのフェーズ3試験が進行中です。膵臓がんのフェーズ2試験も完了しており、膵管腺がん(PDAC)の二次治療薬として中国で画期的新薬指定、米国でファストトラック指定を受けています。

  • 競合との比較: アステラス製薬のVyloyは、膵臓がんへの適応拡大を目指したフェーズ2試験(GLEAM)で失敗しています。

武田のオンコロジー部門責任者であるテレサ・ビテッティ氏は、これら2つの薬剤が「様々な固形がんで患者の重要な治療ギャップに対処する可能性を秘めている」とし、「武田のオンコロジーポートフォリオを変革し、2030年以降の成長を強化する」と述べています。

元記事:Takeda builds in cancer with monster $11.4bn Innovent deal