米国HHSの340Bリベートモデル導入が一時差し止め
米国の連邦判事は、HHS(保健福祉省)が2025年1月1日に導入を予定していた「340Bリベートモデル」に対し、一時的な差し止め命令を出しました。これにより、モデルの導入は計画通りには進まなくなりました。
訴訟の経緯と主な主張
ランス・ウォーカー判事は、メイン州の地方裁判所に提訴されたアメリカ病院協会(AHA)と他の原告側の主張を支持しました。原告側は、この新しいモデルが「違法」であり、米国で最も脆弱な人々を支援する病院の年間コストに「数億ドル」を追加することになると主張しています。
340B薬割引プログラムとは
340B薬割引プログラムは、製薬会社に対し、「セーフティネット」とされる医療システム(無保険者や低所得患者を診療する施設)に対する外来患者向け医薬品の販売を割引価格で行うよう義務付けています。現在、これらの割引は前払いで適用されていますが、製薬会社は、医薬品が通常の商業価格で購入された後にのみ病院にリベートが支払われる「後払いリベート」方式への変更を求めていました。
製薬会社と政府機関の立場
HHSのHRSA(Health Resources and Services Administration)は、この新しいリベートモデルの試験運用を開始する準備を進めていました。12月には、複数の製薬会社が連邦機関を支持して訴訟に参加し、その実施が計画通りに進むよう求めていました。業界団体であるPhRMAも弁護を支援しました。
製薬会社は、340Bプログラムが脆弱な人々への医薬品アクセス確保という本来の目的から逸脱し、割引された医薬品の受領者が無保険患者や保険会社に高値を請求し、その差額を「懐に入れている」と主張しています。
判決の詳細
ウォーカー判事は、製薬会社がHRSAのパイロット開始を支持して介入しようとした申し立てを却下しました。その理由は、製薬会社が「政府が訴訟の弁護において自らの利益を適切に代表しないことを証明できなかった」ためです。
340Bプログラムの規模と論争
HRSAの最近のデータによると、2024年の340Bプログラムに基づく医薬品購入額は814億ドルに上り、そのうち340B指定病院が約87%(710億ドル)を占めています。
AHAは、プログラムの成長は医薬品業界の成長と一致しており、長年にわたる超党派の努力によって範囲が拡大されてきた結果だと反論しています。AHAは、病院が支払能力に関わらず患者をケアする義務があるとし、340Bプログラムを「製薬会社がNIH(米国国立衛生研究所)による研究など連邦プログラムから得た莫大な財政的利益の一部を社会保障制度に還元する主要な方法」と位置付けています。AHAは、製薬会社が2024年の約1.7兆ドルの収益のうち「ごく一部」しか貢献していないと主張しています。
一方、最近のCBO(議会予算局)の報告書は、340Bプログラムが「より高価な医薬品の処方、サービスの拡大、病院とオフサイトクリニックの統合など、連邦支出を増加させる傾向のある行動を奨励している」と結論付けています。
今回の判決はパイロット実施に一時的な中断をもたらしましたが、2026年には340Bリベート実施を巡るさらなる法的紛争が予想されます。