MSD、初の経口PCSK9阻害剤「Lipfendra」でFDA承認を獲得
MSDは、経口PCSK9阻害剤「Lipfendra (enlicitide)」がFDA(米国食品医薬品局)からLDLコレステロール低下治療薬として承認されたことを発表しました。これにより、MSDはアストラゼネカなどの競合他社に先駆けて、この種の薬剤を米国市場に投入することになります。
治療対象と投与方法
Lipfendraは、食事と運動療法と併用し、高コレステロール血症(hypercholesterolaemia)の成人、特にヘテロ接合型家族性高コレステロール血症(HeFH)の患者を対象とした1日1回経口投与の治療薬です。
既存治療との比較と市場への影響
現在利用可能なPCSK9標的療法は、Amgenの「Repatha (evolocumab)」やSanofi/Regeneronの「Praluent (alirocumab)」といった月1回投与の抗体製剤、およびNovartisの「Leqvio (inclisiran)」といった年2回投与の低分子干渉RNA(siRNA)療法であり、これらはいずれも注射剤です。アナリストは、経口治療薬の登場が高コレステロール血症治療を変革し、米国だけで年間数十億ドル規模の市場に対応する可能性を指摘しています。多くの患者がスタチンなどの既存経口薬や注射型PCSK9阻害剤を使用してもLDLコレステロール目標値に達していない現状があり、経口オプションへの需要が高いとされています。
承認の根拠と今後の研究
Lipfendraの承認は、CORALreef Lipids試験とCORALreef HeFH試験の結果に基づいています。これらの試験では、高コレステロール血症およびHeFH患者において、プラセボと比較して24週でそれぞれ56%および59%のLDLコレステロール減少が示されました。MSDは、大規模な心血管イベント研究(CORALreef Outcomes)や、小児HeFH患者への適用、ロズバスタチンとの併用療法など、長期治療に関するさらなる第3相試験も進行中です。
MSDの事業戦略における位置づけと価格
Lipfendraは、2028年頃から特許切れが始まる310億ドル規模の抗がん剤「Keytruda (pembrolizumab)」の収益減を補うためのMSDの新たな主要製品の一つと位置づけられています。また、2030年代半ばまでに年間収益を700億ドル以上に拡大するという同社の目標達成にも貢献すると期待されています。MSDは、Lipfendraの希望小売価格を1日あたり10.50ドル(30日分換算)と発表しています。