低用量アスピリンの高齢者におけるがん予防効果:ASPREE二次解析
大腸がん予防において有望視されている低用量アスピリンが、高齢者における他のがん予防にも有効であるかという疑問に対し、ASPREE研究の新たな二次解析が行われました。この解析は、低用量アスピリンのがん予防効果に「有意な異質性」が存在することを示唆しています。
治療効果のサブグループ別差異
研究者らは参加者を治療に「好ましい」サブグループと「好ましくない」サブグループに分類しました。
- 「好ましい」サブグループでは、低用量アスピリンはがんリスクの低下と関連しました(ハザード比 [HR], 0.85; 95% CI, 0.71-1.00)。
- 一方、「好ましくない」サブグループでは、低用量アスピリンはがんリスクの増加と関連しました(HR, 1.14; 95% CI, 0.95-1.38; P = .02 for heterogeneity)。
アスピリン効果の予測因子
アスピリンの恩恵と関連するいくつかの要因が特定されました。
- 高齢
- 非喫煙状態
- がんの家族歴
- 低いBMI
最も強い予測因子は、Variant Allele Frequencyが10%以上のCHIP(クローン性造血)の存在でした。CHIPは、加齢に伴い血液細胞が遺伝子変異を獲得する現象で、心血管疾患や血液がんのリスク増加と関連しています。
専門家からの懐疑的な見解
この新たな知見に対し、複数の専門家から懐疑的な意見が表明されています。
- McGill大学のChristopher Labos医師は、二次解析は「仮説生成」と考えるべきであり、「確認」とはみなすべきではないと指摘しています。全体結果が陰性であったランダム化比較試験(RCT)の二次解析に「あまり重きを置くのは難しい」と述べています。
- Brigham and Women’s HospitalのGilbert Welch医師は、腫瘍の種類に基づく個別化治療は支持するものの、「ゲノム情報で予防を個別化することは全く別の話」と語っています。これは「議論の余地のあるリスク要因を列挙し、せいぜい少数の人にしか役立たない未証明の介入を行う試み」であると批判しています。
- Welch医師はまた、「がん診断リスク」よりも「がん死亡リスク」の方がはるかに関連性の高いアウトカムであると指摘し、2018年のASPREE研究ではアスピリン群で全死因死亡率が高く、その主要因ががんであったことを挙げています(アスピリン群で1000人年あたり12.7件に対し、プラセボ群で11.1件、HR, 1.14; 95% CI, 1.01-1.29)。
- さらに、高齢者全員にDNAベースの液体生検を行うことの実現可能性や、CHIPを持つ患者に何を伝えるべきかといった、広範なスクリーニングと患者への説明責任に関する疑問も提起されています。
元記事:Low-Dose Aspirin: Cancer Prevention Option for Older Adults?
