フランスの医師、国外へ流出:その背景と実態

フランスの医師、国外へ流出:その背景と実態

フランス人医師の国外流出:現状と動機

フランスでは、2026年の社会保障財政法案を巡る医師組合の不満が高まる中、医師の国外流出(medical expatriation)の問題が再び注目されています。具体的なデータは不足しているものの、フランスの医療組合員は「5000人の医師がフランスを去った」と主張しています。

増加傾向にある国外流出

2023年のMedscapeフランス版による800人以上の医師への調査では、国外移住を考える医師の多くがスイス(23%)またはカナダ(13%)を選択すると回答しました。主な理由として、困難な労働条件、評価不足、低賃金、硬直的な専門職階層が挙げられています。

経済協力開発機構(OECD)のデータによると、フランスで訓練を受けた医師で国外で診療している人数は近年着実に増加しています。

  • 2015年:他のOECD諸国で約3600人のフランス人医師が勤務(過小評価の可能性あり)。
  • 2020年4876人に増加。

この数字は、フランス国内で働く外国人医師27,000人やフランス人医師総数228,000人と比較すると、フランス人医師全体の約2%と控えめです。しかし、国民医療専門職人口統計観測所(ONDPS)は、この流出を「他の先進国のほとんどで観察されるものと比較して限定的」としつつも、専門職の移動性の増加や規制の変化が、将来的に医療移民の漸進的な増加を促進する可能性があると指摘しています。

フランス人医師を最も多く受け入れている国はベルギーで、国外在住フランス人医師の約30%がここで働いています。次いで米国が約25%カナダ、イスラエル、イタリアがそれぞれ約14%を占めています。

流出の主な動機

2024年の医学論文では、一般医に焦点を当てた研究で、17人の国外移住した医師にインタビューが行われました。彼らの動機は多岐にわたります。

  • 出身国との再会、旅行や新しい経験への願望。
  • ワークライフバランスの回復(7人)。
  • より健康で安全な環境で子育てをしたいという家族の価値観。
  • より良い労働条件と高い生活の質を兼ね備えた環境への願望。

多くの医師が、フランスの専門職としての環境に直接関係する要因を挙げています。

  • 開業の複雑さ。
  • 行政負担の過多
  • 人員不足や限られた医療資源による負担。
  • 身体的・精神的健康リスク(6人)。
  • 進行中の医療危機への公的機関の無策や、臨床医への制度的支援の欠如(5人)。
  • 経済的安定の低下(9人):運営費の上昇に見合わない診察料。

しかし、この研究では、国外移住が全ての問題を解決するわけではないことも判明しました。多くの医師が、特に英国、カナダ、米国などの英語圏諸国で、人員不足による患者の待ち時間の延長、二層構造の医療システム、公平な医療アクセスといった同様の問題に直面していました。

元記事:Why French Doctors Are Leaving France