DeepTarget:隠れた癌薬ターゲットとドラッグリポジショニングの機会を特定する計算ツール
新しい研究により、小分子薬のターゲットに対する「全体論的」な視点を持つことで、副作用が治療となり得る可能性が示されました。Sanford Burnham Prebys Medical Discovery InstituteのSanju Sinha博士らは、この考えに基づき、DeepTargetという計算ツールを開発しました。このツールは、CRISPR-Cas9遺伝子編集による遺伝子除去が、特定の薬剤の阻害効果を模倣するという原理に基づいて、薬剤の作用を予測します。
DeepTargetの構築と性能
DeepTargetは、1450種類の薬剤と371の癌細胞株にわたる大規模な遺伝子および薬剤スクリーニング実験の包括的なデータ(DepMap Consortiumから)を活用して構築されました。薬剤の化学構造に依存するのではなく、このデータセットを用いることで、DeepTargetは以下の能力を示しました。
- 主要ターゲット予測の優位性: 8つのテスト中7つで、既存の最先端ツール(RoseTTAFold All-Atom、Chai-1など)よりも主要な癌薬ターゲットの予測において優れた性能を発揮しました。
- 二次ターゲットと変異型への影響予測: 薬剤が典型的な非変異型ターゲットタンパク質、またはその変異型に対して優先的な効果を持つかどうかを予測できるだけでなく、二次ターゲットも特定できます。64種類の既知の多ターゲット癌薬に関する既存データと比較することで、その二次ターゲット予測能力も検証されました。
Sinha博士は、「これらの二次ターゲットをバグではなく特徴として捉えることで、ドラッグリポジショニングを改善できる」と述べています。
ケーススタディ:イブルチニブの予期せぬターゲット
研究チームは、FDA承認済みの血液がん治療薬であるイブルチニブに関する実験的なケーススタディを実施し、DeepTargetの予測を検証しました。イブルチニブは、主要ターゲットであるBruton’s tyrosine kinase (BTK)が肺腫瘍に存在しないにもかかわらず、肺がんにも効果があることが先行研究で示されていました。
DeepTargetは、イブルチニブが上皮成長因子受容体(EGFR)の変異型を二次ターゲットとして作用することで肺がん細胞を殺すことを予測しました。共同研究者であるAni Deshpande博士の研究室との共同で、この予測は、変異型EGFRを持つ癌細胞がイブルチニブに対してより高い感受性を示すことを実験的に確認することで検証されました。これは、薬剤のターゲットが「文脈依存的」である明確な例です。
創薬とドラッグリポジショニングへの影響
Sinha博士は、DeepTargetの優れた性能は、細胞の文脈や経路レベルの効果が直接的な結合相互作用を超えて重要な役割を果たす、実際の薬物メカニズムをより密接に反映しているためだと考えています。
DeepTargetは、化学的結合に焦点を当てた構造的手法を補完するアプローチとして、創薬およびドラッグリポジショニングの取り組みを加速する可能性を秘めています。今後、チームはDeepTargetで得られた知見を基に、新しい小分子候補薬の創出を目指しています。
元記事:Computational deep dive reveals hidden cancer drug targets and repurposing opportunities
