運転パターンの変化が高齢者の認知機能低下の兆候に
長期研究により、高齢者の運転パターンの変化が軽度認知障害(MCI)の指標となる可能性が示唆されました。研究者たちは運転データを用いることで、MCIの発症を82%の精度で予測することに成功しました。
MCI患者にみられる運転行動の変化
3年間の追跡調査の結果、正常な認知機能を持つ高齢者と比較して、MCIの高齢者には以下の特徴が見られました。
- 夜間の運転回数が減少
- 月間の走行回数が減少
- 慣れないルートをあまり走行しない(通常のルートから逸脱しない)
主任研究者であるワシントン大学医学部のGanesh M. Babulal氏は、「GPSデータ追跡デバイスを使用することで、年齢、認知テストのスコア、アルツハイマー病関連の遺伝的リスク要因といった要素を見るよりも、認知機能の問題を発症した人をより正確に特定できることがわかりました」と述べています。この研究はNeurologyに掲載されました。
早期発見の新たな機会
米国では高齢者がドライバーの約20%を占め、この人口の約3分の1が認知機能障害を経験すると推定されています。MCIのドライバーの安全を監視するスケーラブルなソリューションが求められており、車両追跡技術の進歩が有用なデータを提供しうると研究者たちは指摘しています。
研究方法と結果
研究では、298人の参加者(平均年齢75.1歳、女性45.6%)の運転データを分析しました。このうち56人がMCIの高齢者で、残りは正常な認知機能(NC)でした。参加者は神経心理学的評価を受け、アルツハイマー病の既知のリスク因子であるAPOE epsilon 4対立遺伝子の遺伝子型も調べられました。
車載GPSトラッカーが最大40ヶ月間、参加者の運転行動(総走行回数、平均距離、夜間運転、速度超過、ルート変動など)を毎日記録しました。
- 経時的な運転行動の変化: ベースラインではMCIグループとNCグループの運転習慣に類似性が見られましたが、時間とともにMCIの高齢者では月間走行回数(P < .001)と夜間走行回数(P < .001)が減少しました。また、ルートの予測不能性(random entropy)が統計的に有意に低く、より慣れたルートを運転する傾向が示されました。
- MCIを識別する要因: 速度超過、ルート変動、中・長距離といった運転要因は、MCIのドライバーをNCから82%の精度(AUC 0.82)で区別できることが判明しました。人口統計学的要因、PACCスコア、APOE epsilon 4ステータスをモデルに追加すると、精度は87%に向上しました。運転データがない場合、精度は76%に低下しました。
意義と限界
Babulal氏は、「人々の日常の運転行動を見ることは、認知能力と機能能力を監視するための比較的負担が少なく、目立たない方法です。これにより、事故やニアミスが起こる前に、リスクのあるドライバーを早期に特定し、早期介入を促すことができるでしょう」と述べています。
研究の限界としては、参加者の大半が白人で高学歴であったこと、データが外部で検証されていないことが挙げられます。