AIを活用した希少皮膚疾患診断の進展
希少な皮膚疾患の患者は診断までに長年かかることが多く、症状が多岐にわたるため特定の疾患と結びつけるのが困難です。この課題に対し、米国皮膚科学会(AAD)のデータベースで訓練された人工知能(AI)プラットフォーム「PhenOM」が、正確な診断を簡素化するためのパターン特定に大きな進歩を見せています。
PhenOMとDataDermの連携
OM1社のPhenOMは、2023年からAADのDataDermレジストリから匿名化されたデータにアクセスしています。この連携は、まず汎発性膿疱性乾癬(GPP)の教育イニシアチブを支援するために始まりました。GPPは広範囲にわたる痛みを伴う膿疱性水疱を引き起こし、腎不全や呼吸不全など生命を脅かす合併症につながる可能性があるため、診断が特に困難な疾患です。
疾患の「フィンガープリント」識別
OM1の「Patient Finder」ツールは、GPP患者が適切な診断を受ける前に共通のパターン(類似の症状、効果のない治療歴など)を医療履歴に持っているという考えに基づいています。このツールは、診断、投薬、症状、処置、検査結果を含む疾患の「フィンガープリント」を特定し、GPPの可能性が高い患者を識別します。この知見は、AAD会員や非皮膚科医へのGPPに関する教育に活用されています。
対象疾患の拡大とAIの課題
現在、このツールは化膿性汗腺炎の患者特定にも拡大されています。化膿性汗腺炎では、「重度の疼痛と疼痛管理の病歴」が最も強力な分析シグナルの一つであることが判明しています。
しかし、AIの課題も存在します。
- 説明可能性の難しさ: AIの動作原理は「科学的手法」とは異なり、理解が困難です。
- データセットの偏り: DataDermは皮膚科医へのアクセスがある患者のデータが中心であり、アカデミックな医療機関からの報告が少ないなど、データに偏りがあることが認識されています。
AIは「拡張知能」として機能
AADと共同研究者は、AIによる知見は処方的ではなく補助的なものであると強調しています。これを「拡張知能(augmented intelligence)」と呼び、臨床医の診断と治療選択を支援するためのものであり、医師の監督なしには患者に危害を及ぼす可能性があるとされています。AIは医師を置き換えるものではなく、臨床現場で最も影響力の高い「小さなヒント」を提供する役割を担います。
この共同研究は、GPPのFDA承認治療薬であるスペソリマブ(Spevigo)を持つベーリンガーインゲルハイム社から財政的支援を受けています。