ケトジェニックダイエットがうつ病症状を大幅に改善する可能性:小規模予備研究が示唆
標準治療(薬物療法や心理療法)と併用したケトジェニックダイエット(ケトダイエット)が、大うつ病性障害(MDD)の症状を約70%減少させる可能性が、小規模な予備研究で示されました。この研究は、「Nature Translational Psychiatry」にオンライン掲載されました。
研究の概要と方法
対象者: MDDと診断され、カウンセリングまたは治療を受けている大学生16名(平均年齢24歳)。
介入: 10~12週間の「適切に構成されたケトダイエット」を実施。
1日あたりの炭水化物摂取量50g未満。
中程度のタンパク質摂取量(体重1kgあたり1.2~1.5g)。
全食品からのモノ不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸を重視。
肉、チーズ、卵、非デンプン質野菜、低GI果物などが推奨された。
評価項目:
うつ病症状(自己申告および臨床医評価)。
ウェルビーイング。
認知機能(エピソード記憶、処理速度、実行機能など)。
血中ケトン値によるケトーシス状態の確認。
脳由来神経栄養因子(BDNF)などの生化学的マーカー。
主要な研究結果
うつ病症状の改善:
自己申告によるうつ病症状が69%減少(P < .001)。
臨床医評価によるうつ病症状が71%減少(P < .001)。
ウェルビーイングの向上: 研究開始2週目で2倍、研究終了時までに3倍のウェルビーイングの増加が報告されました。
認知機能の改善:
エピソード記憶(聴覚言語学習テストで10%向上、P = .032)。
処理速度(口頭記号数字テストで5%向上、P = .046、パターン比較テストで4%向上、P = .021)。
実行機能の改善も認められました。
BDNFの増加: BDNFが32%増加し、抗うつ効果の神経生物学的メカニズムである可能性が示唆されました。
体重減少: 参加者のほぼ全員が体重を減らし、平均11ポンドの体重減少が見られました。ただし、うつ病症状の改善は体重減少のみによるものではない可能性が示されています。
考察と今後の展望
研究者らは、代謝の健康状態の悪化が不安やうつ病のリスクを高めるというエビデンスが増えている中で、この研究結果は「概念実証」として有望であると述べています。ケトダイエットの潜在的なメカニズムとして、脳へのエネルギー供給増加やBDNFの増加が考えられます。
研究の限界と専門家の見解
本研究は、小規模なサンプルサイズ、単一群デザイン、対照群の欠如、高い脱落率、大学生に限定された点が限界として挙げられています。ボランティア参加による選択バイアスの可能性や、ケトダイエットがすべての人に適しているわけではないという懸念も示されています。
専門家は、現時点ではケトダイエットをMDDの「治療法」と見なすことはできないとしつつも、「適切な患者には有効な介入策となる可能性がある」と指摘し、より広範な集団を対象としたランダム化比較試験の必要性を強調しています。