ブラジルの公衆衛生システム(SUS)を巡る医療人材の国際移動
英国の国民保健サービス(NHS)がブラジルの地域保健ワーカーシステムに触発されたモデルを採用するなど、ブラジルの公衆衛生システム(SUS)は国際的に注目を集めている。これは、SUSが普遍的医療の優れたモデルと見なされる一方で、実践上の課題も抱えているという複雑な評価を反映している。
ブラジルで働く外国人医師の視点
ブラジルで働く外国人医師の多くはSUSを高く評価している。ケニア人医師Dennis Kiriiは、政府の学部留学生交換プログラム(PEC-G)でブラジルに留学し、医学学位を取得。SUSの理念を「並外れたモデル」と称賛する一方、待ち時間や資源不足といった実践上の課題も指摘する。しかし、母国ケニアの医療システムと比較して、SUSの普遍的ケアの強みを強調する。
キューバ人医師Luis Sauchay Romeroは、遠隔地への医師派遣を目的としたMore Doctorsプログラムでブラジルに赴任。SUSへの適応は容易で、プライマリケアで多くの経験を積んだと語る。しかし、地方行政による運営のばらつきがシステムの弱点であると指摘している。
外国医学学位の再認定(Revalida)
ブラジル国外で医学学位を取得した医師がブラジルで働くためには、Revalidaと呼ばれる再認定試験に合格する必要がある。これは、理論試験と臨床技能試験の2段階で構成され、SUSに関する知識も問われる。Revalidaは非常に複雑で時間がかかり、歴史的に合格率が低い(2024年の合格率は30%未満)ことで知られている。Romero医師もその難しさを語っている。
海外で働くブラジル人医師の視点
多くのブラジル人医師は、より良いキャリアの機会を求めて海外(主に欧米)に移住している。イタリアで救急医として働くブラジル人医師Thiago Funkもその一人だ。彼はイタリアでの学位再認定プロセスを経験し、言語や文化、そして患者からの偏見といった課題に直面した。しかし、SUSでの訓練、特に家族健康戦略が「これまでで最高」であり、海外で非常に役立っていると評価している。彼はイタリアの医療システムがSUSと同様に普遍的だが、軽症の場合は少額の自己負担がある点を指摘する。
SUSの国際的魅力と構造
SUSは、ラテンアメリカやアフリカ諸国から多くの医師を引きつけている。SUSは、プライマリケア、セカンダリケア、ターシャリケアの3段階で構成され、全国に53,356の家族健康チームと281,425人の地域保健エージェントが配置されている。
SUSは実践上の課題を抱えながらも、その普遍的なケアモデルと特に家族健康戦略が国際的に高く評価され、世界中の医療従事者にとって魅力的なシステムであり続けている。