レプチンは再び科学界で最も注目される存在となった

レプチンの再評価:肥満と代謝疾患治療における新たな可能性

レプチン発見と初期の挫折

約30年前、ロックフェラー大学のジェフリー・フリードマン博士は、食欲旺盛ながらエネルギー不足で不妊、免疫不全、体温調節不能なマウスを研究し、レプチンというホルモンが脳に満腹感を伝えることを1994年に発見しました。当初、レプチンは奇跡の減量薬として期待されましたが、臨床試験では遺伝的にレプチンが低いごく一部の人々にしか効果が見られず、関心は薄れていきました。多くの肥満者はレプチンが過剰で、レプチン受容体が鈍感になるレプチン抵抗性という状態にあり、これが食欲不振や代謝低下、体重増加につながると考えられています。

レプチンの復活:なぜ今、注目されるのか

一度は「完全に失敗」と評されたレプチンですが、現在、その物語は書き換えられつつあります。

1. 稀な代謝疾患への治療

ミシガン大学のエリフ・オーラル博士は、レプチンを産生する脂肪細胞が不足する稀な疾患リポジストロフィーの患者にレプチン注射を行い、劇的な改善を達成しました。2014年には、 metreleptin が最も重篤なリポジストロフィーの治療薬としてFDAに承認されるに至りました。

さらに、オーラル博士は、代謝機能関連脂肪性肝疾患(旧非アルコール性脂肪性肝疾患)や、重度の神経性食欲不振症の女性におけるうつ病や不穏の緩和、食事に対する肯定的な感情の回復にもレプチンが有効である可能性を示唆しています。

2. GLP-1受容体作動薬との併用療法

GLP-1受容体作動薬(例:オゼンピック、マンジャロ)が減量薬として爆発的な成功を収める中、レプチンが再び有望な候補として浮上しています。GLP-1作動薬の課題である副作用(吐き気など)や、減量に伴うレプチン低下による食欲増進・エネルギー消費低下といった長期的な体重維持の困難さに対し、レプチンが解決策となる可能性があります。

レプチンはGLP-1とは異なる脳メカニズムで作用し、高用量でも吐き気が少なく、脂肪燃焼を促しつつ除脂肪体重を維持する効果が示されています。

ランディ・シーリー博士の研究チームは、レプチンとGLP-1受容体の両方を活性化する分子を開発し、マウスで単独標的よりも大きな減量効果を確認しました。これにより、GLP-1化合物の使用量を減らし、副作用を抑えつつ減量効果を高める新しい治療法への道が開かれています。

3. レプチン抵抗性の克服と新たなアプローチ

フリードマン博士のラボでは、脳のエネルギー中枢である視床下部がレプチン信号を認識できない細胞メカニズムを発見し、一般的な薬剤であるラパマイシンがマウスのレプチン感受性を回復させる可能性を見出しました。

  • 一方、UTサウスウェスタン医療センターのフィリップ・シェラー博士は、過剰なレプチンがレプチン抵抗性、糖尿病、肥満、さらには線維症や癌のリスクを高める「暗い側面」を持つと指摘し、レプチンを減らすことで感受性を回復させるという、これまでとは逆のアプローチを提唱しています。

これらの研究は、レプチンの潜在能力がまだ十分に解明されていないことを示しており、患者に応じてレプチンを増やす、減らす、あるいは他の薬剤と組み合わせるなど、多様な治療戦略の可能性を広げています。

元記事:How Leptin Became the Sexiest Thing in Science (Again)