初回発作とがんリスク:全国規模コホート研究
研究の背景と目的
発作はがんの既知の合併症であるが、初回発作が未診断の神経学的または非神経学的なんらかのがんの兆候となり得るかは不明であった。本研究は、初回発作患者におけるがんリスクを一般集団と比較し評価することを目的とした。
研究方法
デンマークの医療登録データを用いて、1996年1月から2022年12月までの期間にわたる全国規模の集団ベースコホート研究が実施された。
- 対象者:
- 18歳以上の初回病院発作診断を受けた49,894人。
- がんまたはてんかんの既往歴がない者。
- 発作診断時の中央年齢は51.5歳、追跡期間の中央値は5.7年。
- 主要評価項目:
- 初回発作後1年以内、1~5年、5~20年における、すべてのがんおよび部位別がんの絶対リスクと標準化発生比(SIRs)。
- SIRsは、性別、年齢、診断年を考慮した全国発生率に基づき、観察されたがん症例数と期待されるがん症例数の比として算出された。
主要な結果
- 短期的ながんリスク(初回発作後1年以内):
- 絶対リスクは全体で4.1%であった。
- 神経系がんは2.4%
- 非神経系がんは1.7%
- 標準化発生比(SIR):
- 神経系がんのリスクは、一般集団と比較して約76倍高かった(絶対リスクは2.4%と控えめながら)。
- 非神経系がんのリスクは2.3倍高かった。
- 部位別に見ると、脳がんが最もリスク増加を示し(絶対リスク1.7%、SIR 98.7)、非神経系がんでは肺、気管支、気管がんが最大の相対リスクを示した(絶対リスク0.6%、SIR 5.94)。
- 18~29歳の若年層では、初回発作後1年以内のあらゆるがんの相対リスクが最も高かった(絶対リスク1.4%、SIR 27.9)。
- この短期的ながんリスクの増加は、未診断のがんが発作を引き起こす「逆因果関係」や、初回発作後の診断評価の強化による早期発見を反映している可能性があると著者らは指摘している。
- 長期的ながんリスク:
- がん全体のリスクは、長期的に見るとわずかに上昇するにとどまった(1~5年でSIR 1.18、5~20年でSIR 1.33)。
臨床的意義
本研究の結果は、初回発作が神経系および非神経系の潜在的ながんの早期臨床兆候となる可能性を示唆しており、初回発作患者に対して広範な診断評価を検討することの重要性を強調している。
研究の限界
- 確立されたてんかん患者が「特定されていない発作」と誤分類された場合、がんリスクを過大評価する可能性がある。
- 社会経済的地位、生活習慣、遺伝的素因、基礎疾患など、発作リスクに関連する未測定または未知の因子が観察された関連性に影響を与えた可能性がある。
- アルツハイマー病などの基礎疾患を持つ患者は、既存の併存疾患のため診断評価が少なく、がん検出率に影響を与えた可能性がある。