PCSK9阻害薬エボロクマブ、一次予防で主要心血管イベントを大幅抑制:VESALIUS-CV試験
PCSK9阻害薬エボロクマブの一次予防における主要心血管イベント(MACE)抑制効果を評価する初のグローバル無作為化試験「VESALIUS-CV」の結果が発表されました。本試験は、以前の二次予防で確認されたリスク低減と同様の規模のMACEリスク低減を示しました。
主要な発見
中央値4.6年間の追跡期間において、エボロクマブはデュアル複合プライマリーMACEエンドポイントにおいて、それぞれ19%と25%のリスク低減を示しました(いずれもP < .001)。
複合プライマリーMACEエンドポイントの一つ(心筋梗塞、冠動脈疾患死、虚血性脳卒中)では、エボロクマブ群で6.2%、プラセボ群で8%のイベント発生率となり、25%の相対リスク低減(HR 0.75; 95% CI 0.65-0.86)が認められました。
もう一つの複合プライマリーMACEエンドポイント(上記3点に虚血性動脈血行再建術を追加)では、エボロクマブ群で13.4%、プラセボ群で16.2%のイベント発生率となり、19%の相対リスク低減(HR 0.81; 95% CI 0.73-0.89)が示されました。
全死因死亡についても20%のリスク低減(P = .0005)が見られましたが、これは事前規定された複合エンドポイントには含まれていなかったため「名目上」の結果とされました。
研究デザインと対象患者
VESALIUS-CV試験には12,257人の患者が登録され、1:1でエボロクマブ(140 mgを2週間ごとに皮下投与)またはプラセボに無作為に割り付けられました。患者は冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、末梢動脈疾患、または高リスク糖尿病と診断されていましたが、過去にASCVDイベントの既往がある場合は除外されました。ベースラインのLDL-C中央値は122 mg/dLでした。
脂質仮説の検証とLDL-C低下
本試験は、LDL-Cの漸進的な低下がイベントリスクの比例的な低下に繋がるという25年以上前に提唱された「脂質仮説」を裏付けるものでした。エボロクマブ群では、48週時点でLDL-Cが中央値で63 mg/dL、プラセボと比較して55%の低下(約45 mg/dL)を達成し、このレベルは研究期間中維持されました。
臨床的意義と将来への示唆
研究を主導したErin A. Bohula医師は、「今回の試験におけるMACEの低減は、以前にイベントがあったかどうかにかかわらず、高リスク患者における集中的なLDL-C低下を支持する」と述べました。また、Medical University of South CarolinaのPamela B. Morris医師は、ASCVDは連続体であり、イベントの有無に関わらず積極的なLDL-C低下が疾患経過を変えることを本結果が示していると指摘し、「より集中的な脂質低下が、疾患のより早い段階であっても虚血性イベントを減らすのに優れている」と述べました。
このデータは、一次予防における現在のLDL-C目標値も引き下げるべきであることを示唆しています。Morris医師はVESALIUS-CV試験を「プラクティス・チェンジング(診療を変えるもの)」と呼び、MACE発症前の進行性心血管疾患の連続体において、より早期の介入に臨床医の焦点を移すことになると予測しています。また、同様のLDL-C低下をもたらす他の薬剤(例:インクリシラン)にも同様のベネフィットが期待できると述べました。
