次世代治療研究を支援する主要細胞を全て含む培養脳

次世代治療研究を支援する主要細胞を全て含む培養脳

全主要脳細胞タイプを統合した3Dヒト脳組織モデル「miBrains」の開発

MITの研究者らは、ニューロン、グリア細胞、血管系を含む主要な6種類の脳細胞タイプをすべて統合した初の3Dヒト脳組織プラットフォーム「Multicellular Integrated Brains (miBrains)」を開発しました。個々のドナーの誘導多能性幹細胞(iPS細胞)から作製されるmiBrainsは、ヒト脳組織の主要な特徴と機能を再現し、遺伝子編集により容易にカスタマイズ可能で、大規模研究をサポートする量で生産できます。

miBrainsの利点と特徴

miBrainsは、複雑な脳生物学の理解や疾患治療薬の開発において、より高度な生体ラボモデルを提供します。

完全な細胞統合: ヒト脳に存在する6つの主要な細胞タイプすべてを含む唯一のin vitroシステムです。

パーソナライズ: 患者個人のゲノムから派生するため、個別化されたモデルを作成できます。

機能的な自己組織化: 血管、免疫防御、神経信号伝達などの機能的なユニットに自己組織化します。

血液脳関門: 脳への物質の侵入を制御する血液脳関門の機能も備えています。

既存モデルの利点を融合: 単一細胞培養のアクセスしやすさとスピードを保ちつつ、動物モデルの複雑さを反映した結果が得られます。

研究チームは、細胞の物理的構造を支持するハイドロゲルベースの「神経マトリックス」と、機能的な神経血管ユニットを形成する適切な細胞比率を特定することで、多細胞統合の課題を克服しました。そのモジュール設計により、細胞入力、遺伝的背景、センサーを精密に制御することが可能です。

アルツハイマー病研究におけるmiBrainsの応用と発見

miBrainsの能力を検証するため、研究者らはアルツハイマー病の最も強力な遺伝的予測因子であるAPOE4遺伝子変異の研究を行いました。

APOE4アストロサイトの役割: アストロサイトがAPOEタンパク質の主要な産生細胞であることは知られていましたが、APOE4変異を持つアストロサイトが病理に果たす役割は不明でした。miBrainsでは、他の細胞タイプと統合されたアストロサイトの自然な相互作用を模倣できるため、この研究に最適でした。

多細胞環境の重要性: APOE4アストロサイト単独の培養では見られなかった免疫反応性が、miBrains内ではアルツハイマー病に関連する多くの指標で発現しました。

病理のメカニズム: APOE4 miBrainsではアルツハイマー病関連タンパク質であるアミロイドとリン酸化タウの蓄積が見られました。特に、APOE3のmiBrainsにAPOE4アストロサイトを組み込んだ場合でも、アミロイドとタウの蓄積が確認されました。

  • アストロサイトとミクログリアの相互作用: ミクログリアが存在しないAPOE4 miBrainsではリン酸化タウの産生が有意に減少し、アストロサイトとミクログリアを組み合わせた培養液を投与するとリン酸化タウが増加しました。これにより、ミクログリアとアストロサイト間の分子クロストークがリン酸化タウ病理に必要であるという新たな証拠が示されました。

将来展望

研究チームは、血流を模倣するためのマイクロ流体技術の導入や、単一細胞RNAシーケンスによるニューロンプロファイリングの改善など、miBrainsに新機能を追加する計画です。miBrainsは、アルツハイマー病をはじめとする疾患の研究発見と治療法の開発、さらには個別化医療の実現に大きく貢献すると期待されています。

元記事:Lab-grown brains with all major cell types support next-generation therapy research