カナダの医薬品ケア法(Pharmacare Act):進捗と課題
Bill C-64、医薬品ケア法(Pharmacare Act)は、2024年10月10日に王室の裁可を受け、施行されてから1年以上が経過しました。この法案は、カナダで約110万人の医薬品保険未加入者向けに、全国的かつ普遍的な医薬品ケアを開発することを目的としています。
初期段階の進展と主要原則
政府は、ブリティッシュコロンビア州、マニトバ州、ユーコン準州、プリンスエドワードアイランド州と二国間協定を締結しました。これらの協定は2026年から4年間で合計9億2800万カナダドルの価値があります。
法案の主要原則は以下の通りです。
場所や収入に関わらず医薬品へのアクセスを確保すること。
経済的障壁を最小限に抑えること。
患者の安全を優先すること。
カナダ全土での普遍的な医療保障を推進すること。
最初のステップとして、法案は糖尿病治療薬と避妊薬の費用負担を軽減することに焦点を当てています。また、注射器や血糖測定ストリップなど、糖尿病の管理・モニタリングに必要な供給品へのアクセスを改善するための基金を設立しました。さらに、カナダ医薬品庁(Canadian Drug Agency)を設立し、全国処方集の策定、一括購入戦略、適切な処方薬使用戦略を任務としています。
管轄権の問題と反対意見
締結された4つの二国間協定は、約18%のカナダ人(糖尿病と診断された約380万人、生殖年齢の女性170万人以上を含む)に影響を与えます。しかし、残りの州は管轄権の根拠からPharmacare Actの採用に反対しています。ケベック州やアルバータ州の当局は、医療は州の管轄下にあると主張し、連邦政府による既存の公的・私的処方薬保険制度への干渉を問題視しています。連邦政府は、マニトバ州とプリンスエドワードアイランド州での費用障壁撤廃が患者に良い影響を与えていると述べ、懸念の払拭に努めています。
専門家や関係者の見解
支持者: カナダ労働会議 (CLC) のBea Bruske会長は、この法案を「労働者とその家族にとって記念碑的な勝利」と評価し、費用負担の選択をなくす一歩であると述べました。CLCは、すべての州・準州が二国間協定に署名し、真に普遍的な単一支払者制度の実現を強く求めています。
懸念を示す声:
Canadian Cardiovascular SocietyのSeema Nagpal医師は、潜在的な利益を認めつつも、プログラムの実施詳細(拡大時期、対象範囲、民間保険の役割、アクセス基準、医師の行政負担)が不明確であると指摘しています。
Innovative Medicines CanadaのJoe Farago氏は、現状の法案の利益は限定的であり、改正が必要だと主張しています。彼は、単一支払者アプローチが雇用主が現在負担している費用を公的システムに移転させ、公的システムの運用コストが増加するため、資金の価値が制限されると指摘。患者にとって最大の価値を得るためには、公的・私的保険の二重市場を維持し、州が公的プログラムに資金を割り当てる自由を許容すべきだと提言しています。また、民間保険はより迅速で幅広い医薬品アクセスを提供しており、現状の糖尿病薬リストはすべての治療薬をカバーしておらず、アクセスを制限していると述べています。
この法案は、カナダの医療制度における重要な一歩ですが、その完全な実施と効果については、まだ多くの議論と課題が残されています。
