科学雑誌の編集委員会は、科学コミュニケーションにおいて中心的な役割を担っており、原稿の評価や出版の決定を通じて科学的知識の方向性と正当性に影響を与えます。このため、その構成を理解することは非常に重要です。
研究の背景と方法
スペイン国立研究評議会の一部である高等社会研究所の研究者らは、この重要性に着目し、主要な商業出版グループ(Elsevier, Springer Nature, Taylor & Francis, Wiley)、オープンアクセスプラットフォーム(MDPI, Frontiers, PLOS)、科学学会系出版社(ACS, AIP, IOP, RSC)、大学出版局(Oxford University Press, Cambridge University Press)を含む15の出版社から10,504誌の科学雑誌を分析しました。この研究は、多様な出版モデルとポートフォリオ規模を組み合わせた比較可能で国際的な概観を提供するために設計されました。分析の結果、811,660件の編集職が特定されました(これは個々の人物ではなく、異なる職位の合計です)。
分析対象の雑誌は、Scopusにインデックスされているアクティブな雑誌の約3分の1に相当し、そのうち8968誌(約85%)がScopusにインデックスされていました。
最も代表的な分野
対象雑誌の主題分類では、医学が最も代表的なカテゴリーであり、全雑誌の約19%を占めました。健康科学全体(医学、保健専門職、歯学、看護学、獣医学を含む)に広げると、この割合は約23%に上昇し、分類された雑誌のほぼ4分の1が健康分野または関連分野に属することを示しています。
主要な研究結果
本研究から、いくつかの重要な結論が導き出されました。
- 高度に階層的な構造: 編集委員会は単なる名誉職リストではなく、実際の作業構造であり、その規模は管理する論文量と関連しています。また、その構造は非常に階層的であり、作業の大部分は査読編集者、編集委員、アソシエイトエディターといった広範な層に集中しており、編集長は全体のわずか0.9%に過ぎません。
- 多様性の欠如: 編集委員会へのアクセスは、科学コミュニティの多様性を反映していません。
ジェンダー: ジェンダーが特定できた職位において、女性はわずか33.2%でした。
地理: 非常に強い地理的集中が西洋、主に英語圏の国々に見られます。米国が28.03%でトップであり、英国(7.68%)、イタリア(7.56%)、ドイツ(3.81%)が続きます。一方、中国(10.95%)、日本(2.56%)、インド(2.63%)といったアジアの主要な科学システムは、研究者数に比べて過小評価されています。
- 所属: ほぼ90%が大学所属であり、学術界が圧倒的に優勢です。
- オープンアクセスと多様性: オープンアクセスプラットフォームは、より国際的な編集委員会を持ち、米国の編集者の集中度が低い傾向にありますが、この地理的多様性が必ずしもジェンダーの平等につながるわけではないことが示されました。実際、Frontiers, MDPI, PLOSは、女性の代表性が低い出版社の中に含まれていました。
高インパクトジャーナルにおけるジェンダーギャップ
Q1ジャーナル(高インパクトジャーナル)では、女性の割合が約35.3%と、Q2(31.8%)、Q3(29.7%)、Q4(30.2%)と比較してやや高いことが示されました。この関係は統計的に有意ですが、その大きさは小さいです。これは、高インパクトジャーナルが多様性と包摂のポリシーにより注意を払っている可能性を示唆しています。
結果の示唆と今後の展望
編集委員会の多様性の欠如は、知識評価において「盲点」を生み出す可能性があります。委員が似たようなキャリアパスやネットワークを共有している場合、特定のトピックや方法論を認識しやすい一方で、他の国や機関からの研究が見過ごされる可能性があります。
本研究は、2023年11月時点の編集委員会の現状を把握するためのスナップショットを提供しますが、研究者らは今後、これらの委員会の将来的な進化を追跡し、ジェンダー分布、撤回との関連、協力ネットワーク、幹部職のプロファイルなどを詳細に分析する計画です。