新規ADCがHER2低発現乳がんの無増悪生存期間を延長:HORIZON-Breast06試験
HER2低発現進行乳がん患者を対象とした第3相HORIZON-Breast06試験において、HER2標的抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ・レゼテカン (trastuzumab rezetecan)が、標準化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を2倍以上に延長しました。
主要結果:
中央値PFSはトラスツズマブ・レゼテカン群で16.4ヶ月、化学療法群で6.8ヶ月でした。
病勢進行または死亡のリスクを73%低減しました。
客観的奏効率はADC群で75.5%、化学療法群で41.2%でした。
全生存期間(OS)データは未成熟ですが、記述的解析では12ヶ月OS率がADC群で90.6%、化学療法群で81.4%でした(HR 0.67)。
安全性:
ADC群では血液毒性(好中球減少症、白血球数減少、貧血など)がより頻繁に発生し、グレード3以上の治療関連有害事象はADC群で84.1%、化学療法群で67.9%でした。
用量調整がADC群の50.4%で必要でした。
HER2標的ADCで懸念される間質性肺疾患(ILD)の発生率は低く、ADC群で2.5%(グレード3または4が3例、ILD関連死なし)でした。この発生率は、既存のトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)で報告されている12-15%よりも低いと指摘されています。
臨床的位置づけ:
トラスツズマブ・レゼテカンは、HER2低発現乳がん患者にとって「効果的な新規治療選択肢」となり得ると結論付けられています。
しかし、既存のT-DXdなどの承認済みADCとの治療シーケンスや直接比較に関するエビデンスは不足しており、今後の課題とされています。両ADCの作用機序が重複する可能性も指摘されています。
本試験は中国の患者のみを対象としており、フォローアップ期間も比較的短いという限界があります。
別の新規ADC、ロルディタミグ・デウデルクステカンも有望:APEX-Breast01試験
同じESMOセッションで発表された第3相APEX-Breast01試験では、別の二重特異性HER2標的ADCであるロルディタミグ・デウデルクステカン (rolditamig deuderuxtecan; TQB2102)が検討されました。
主要結果:
HER2低発現再発または転移性乳がん患者(HR陽性患者が主要評価項目集団)において、中央値PFSはADC群で16.4ヶ月、化学療法群で5.5ヶ月でした(HR 0.29)。
この効果はHER2低発現全体集団でも同様でした。
OSデータは未成熟ながら、ADC群でOS改善の「明確な傾向」が見られました。
安全性:
グレード3以上の治療関連有害事象はADC群で69.1%、化学療法群で42.4%であり、主に血液毒性によるものでした。
ILDはADC群の2.2%で発生し(グレード3が3例、関連死なし)、こちらも低い発生率でした。
治療分野の課題と将来展望
両試験の議論では、既存のADCとの直接比較試験の欠如が指摘されました。トラスツズマブ・レゼテカンとTQB2102は、T-DXdとは異なる薬理学的特性(ペイロードや抗体設計)を持ちますが、これらの違いが臨床的に意味のある利点につながるかは不明です。最適な患者選択や治療シーケンスを決定するためには、直接比較試験やバイオマーカーに基づいた研究が不可欠であると結論付けられています。